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「各教科の学習は、睡眠学習によって効率的かつ、生活の時間を減らさないよう変化した。学習装置の完全普及により、学習に費やす時間は睡眠と同義になったのだ。
もはや存在する意義も無いこの『学校』で、貴女は子供達と一体何をしている?」
スーツの男は、目の前の女性に問う。
「私にしか教えられない事を、教えているのです」
きっぱりと言い切る女性に、スーツの男は応える。
「友達作りや交流…は、睡眠学習時にネットワークを介して実施されているのはご存知のはず。体育やスポーツ、グループワークの経験も」
「…えぇ。それでも教える事が、」
「いい加減にしろ!何をしているんだ!」
スーツの男は女性を強引に押し除け、教室のドアを開け放つ。

そこには。
痛みも加減も、我慢も忍耐も、義理も躊躇も知らない子供達が醜く争う、暴力に満ちた光景があった。
「…教えなくては、いけないんです」
訴える女性は、痣だらけだった。
SF
公開:21/08/17 18:00
更新:21/08/16 17:51

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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