赤紙

ついに私にも“赤紙”が来た。
人口二千万に没落した国家からの出産命令。
昔と違って今は妊娠した女性の四割が命を落とすか、重篤な病や障害を負う時代。
難しいことは分からないが、地球の環境変化の人体への影響で出産能力が減退したということらしい。
私の母も私を命がけで産んだ。
国家命令ではなく、ただ不妊を怠った結果だが。おばあちゃんから狂ったように怒られたらしい。
母が私によく言うこと。
「将来お母さんに孫の顔を見せようなんて思わなくて良いからね」

赤紙を断れば十五年の禁固刑が科せられる。
十五年で、その後は非国民と言われようと家族と笑って暮らせる。
私の親友は赤紙が届いてすぐ彼氏と逃亡してしまった。
家族の顔、親友の顔を思い浮かべながら、私はずっと迷い続けている。
私はどうすれば良いのだろう。
国家からの召集期限が、三日後に迫っている。