追憶

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8月なのにエアコンを消した。今晩はそれほどに涼しい。Tシャツに短パンのラフな格好でタオルケットも被らずに眠ったが、身体が凍えそうになって起きた。閉め切った室内の外で雨の流れる音がする。窓を開けるとざーざーと大声で主張するような大雨。冷たい風が顔を触っていった。その寒さに真夏から晩秋まで眠り続けたのかと焦り机の上のデジタル時計を見たが表示されている日付は8月15日。季節を飛ばしてはいなかったようで安堵した。再び外に目を移す。大雨はさらに勢いを増している。身体の芯を冷やす風が吹いている。雨と風が頬を叩いた。この雨も、この風も、誰かの悲しみを感じさせるようだ。空を見ると星など見えないはずなのに煌めくものを見た。それが一瞬大きく光ったような気がして、すぐに光はなくなった。寒い。窓を閉めて室内に戻り、ベッドに寝転がり毛布にくるまった。その夜は遠い昔の夢を見た。
その他
公開:21/08/15 13:48

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