アパートの幽霊
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安アパートの一室で寝苦しい夜に、何度も寝返りをうつ。ふと、隣の部屋から妙な会話が漏れ聞こえてきた。坂を下った「シンドウ」さんの家でふるわれる豪華な食事と酒に何とかありつけないかと相談しているらしい。何と呆れた話なのかと思ったが、そこまで食べたい食事と酒ならばちょっと覗いてみたい。近所に立派な蔵のあるお屋敷があったはずだ。きっとそこに違いない。
次の日、シンドウ家の門が見える脇道で道に迷ったふりをしながら様子を伺う。家から盆提灯を手にした女性と少女が出て来て、台の上の精霊馬を照らした。
『シンドウさんのレナちゃん、大きくなったなあ』
ぎくりと、後ろを振り向くと賑やかな一団が現れた。
『もう、入っていいようだ』
『シンドウさんが手を振ってるよ』
門前でふわりと盆提灯が揺れた。
『お前はまだ入れんな』
背中をトンと押された。懐かしい花火のような匂いがした。
次の日、シンドウ家の門が見える脇道で道に迷ったふりをしながら様子を伺う。家から盆提灯を手にした女性と少女が出て来て、台の上の精霊馬を照らした。
『シンドウさんのレナちゃん、大きくなったなあ』
ぎくりと、後ろを振り向くと賑やかな一団が現れた。
『もう、入っていいようだ』
『シンドウさんが手を振ってるよ』
門前でふわりと盆提灯が揺れた。
『お前はまだ入れんな』
背中をトンと押された。懐かしい花火のような匂いがした。
その他
公開:21/08/13 23:19
怪談の日
お盆
アパートの怪
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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