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驚くほど静かに飛行する爆撃機の影が寝ころぶ私の顔を通過していく。夏空にはんぺんみたいな雲がひとつだけ浮かんでいて、それを私は瓦礫の窓から見ていた。たとえ爆撃されたとしても逃げだす気持ちはなくて、そんな午後を過ごしているのはワクチンの副反応がつらいから。見知らぬ猫が私のおなかの上で眠り倒壊した土壁に猫の重みとこの身を預ける。キッチンでは数人の兵士がとうもろこしを焼いている。同じ状況が過去にもあった気がするのはなぜだろう。国が滅び敵軍に家を接収された。同じ状況などあり得ずこのデジャヴこそが副反応だと私は思う。また眠り、目が醒めると表通りはお祭り騒ぎ。壁の亀裂から表を見ると大破した戦車の上でサイケデリックに踊るワンピースの少年がいて、それを兵士たちが囃したてる夕暮。少年の瞳には深海の澄んだ藍色が満ちていて彼が兵士を次々に撃ち殺すのを見ても驚きはなかった。私はまた眠り、夢とデジャヴの狭間を泳ぐ。
公開:21/08/13 12:19
更新:21/08/13 14:33

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