あつい日

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水辺なら涼しいかと河原を歩く。昨夜の雨で濡れた草を踏むと、ぶよぶよと気持ち悪い。鳴く蝉は焼き付ける刻印。私はなんだってこんなところを歩いているのだろう。もう帰ろうかと思っていると、背後でふうふうと息がする。振り向くと顔を真っ赤にした男がついてくる。ぼたぼたと汗を垂らしながら、ぶよぶよを踏みながら、当たり前のように私と並ぶ。「あついあつい。水辺に来てもちっとも涼しくない」そう言いながら、ふうふうぼたぼたと忙しない。こいつは一体なにを落としているんだろう。気味が悪くて邪険にもできず、あついあついと言い続ける男に「そうですね。冷やしたいなら水に入らないと」と返す。男が立ち止まる。ぼたぼた。急にあたりが暗くなり、蝉の声が止まり、周りの景色も定かでない。男は「なるほど」と呟くと、どぼんと川に飛び込んだ。暗さに目が眩む。ただ、何かがどぼんどぼんと絶え間なく飛び込む水音だけが響く、熱い熱い8月のあの日。
その他
公開:21/08/11 17:51
更新:21/08/11 20:10

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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