勿体ない

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小さい頃から剣道を習っている。けど、正直言ってめんどくさい。毎日毎日汗だらけになって、怒られて、竹刀を振って。
(仮病使って休んじゃお)
そう思い布団に潜る。すると、頭上からブツブツと声が聞こえた。

勿体ない…勿体ない…

「ヒッ!?」

勿体ない…勿体ない…

地を這うような声。怯えた僕は、布団を頭から被る。
声は、まだ続いている。消えろ、消えろと頭の中で念じるが、声は大きくなるばかり。

勿体ない…勿体ない…

勿体ない…練習サボるなんてもったいない…

「…え?」

才能があるのに、練習サボっちまうなんて…そんなん勿体ない…

「………………」
布団から飛び出て、道具を持って、いつもの道場へ向かう。
ちらっと見えたお母さんは、死んだじいちゃんの仏壇に手を合わせていた。
「あら、急にやる気になって」

後から聞いた話だけど、僕のじいちゃん、剣道の全国選手権で優勝したことあるんだって。
その他
公開:21/08/10 11:01

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