怪談少女 界木きょう子

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 放課後の第二理科室で界木きょう子の怪談を聞くことが俺の日課である。
 きょう子は学校内で「怪談少女」と呼ばれていて、怪談が好きすぎて暇そうな人を捕まえて怪談を話し、自分自身の欲を満たすことで有名である。
 きょう子は俺と同じクラスで、俺がクラス唯一の帰宅部であること、放課後は暇であることを知っている。だから放課後は俺を捕まえて欲望のままに怪談を話す。俺は渋々それに付き合う。
 今日の怪談は一人暮らしなのにティッシュの減りが妙に早いという実話怪談だった。ただそれだけの話で幽霊とかは出てこない。正直怖くはなかった。
 そう伝えると、己の怪談論を話し出した。
 「怪談は体験した本人が怖いって思ったら怪談なの!体験者の気持ちで恐怖するのが正しい楽しみ方なんだよ!」
 怪談に夢中で子供っぽいきょう子の目の輝きは、今日も魅力的である。俺が渋々付き合っているのは、これを求めているからなのかもしれない。
青春
公開:21/08/11 00:14

西宮しの

初心者です。体験できなかった、体験したかった青春を小説にして心を充たします。いつか長編を書いてみたい。

※小説内に登場する人物名、地名、商品名などは実在するものとは一切関係ありません。

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