汚れた夏の真相

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5年、短い様で長い月日の中でその景色は変わらなかった。
変わってしまったのは私の方かもしれない。自嘲気味にそんなことを思う。
野球部の監督として勤め上げた日々がフラッシュバックする。懸命な生徒たち、高く飛ぶ白球、あの夏の…。

「私はあなたを軽蔑します」
ナイター照明で照らされた夜のグラウンド、強い言葉で女記者は私を詰る。それを嗜める様に探偵の男、元捕手の教え子は話を続けた。思えば、現役から彼は優秀な選手だった。

「…話していただけますか?監督、あの夏の顛末を。」

サインを他校に売り渡した。外野手と一塁手の選手にはエラーの指示も出した。主力を削りメンバーも操作した。

「…八百長ですね?」
野球賭博。汚い大人たちの娯楽のために球児たちの勝敗は操作されていた。我が校の最終配当金は億に膨らんでいた。

「本来なら初戦で負けるはずだったんだ。決勝の舞台に立った時は生きた心地がしなかったよ。」
ミステリー・推理
公開:21/08/10 21:29
更新:21/08/11 20:50
あの夏の記憶⑧

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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