情熱

俺が無実の罪で服役して１２年が過ぎた。出所の日だ。

「お世話になりました」

お辞儀をして刑務所を後にする。娑婆の空気は美味い。娑婆ってのは、仏教の言葉らしい。まあ俺は、宗教には興味ないがな。むしろ宗教なんて俺は信じない。仏様ってのは、本当に酷い奴だ。なぜ無実の俺がこんな目に遭わなくちゃならない。この１２年、俺の生きる希望だったのは、俺に罪を擦りつけた奴へ復讐する事。復讐の情熱の炎は、決して消える事はなかった。

「おや…。あなた、とても怖い顔をしてますよ。そんな顔では人が怖がってしまいます」

話しかけてきたのは坊主だった。

「うるせぇ」
「ちょっと寺へ寄って行きませんか？この近くです。ついてきてください」
「いや、俺は――」

仕方なく坊主の寺についていった。俺は、なぜか今までの事を話した。

「どうです？仏教を学びませんか？」

俺の情熱の炎は、復讐から仏教を学ぶ事へと変わった。