霊電(霊魂電車)

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ふっと降り立つと、駅の改札のようなところにいた。
駅員らしき黒い影に尋ねてみると
「霊柩車からのお乗り換えですね。ここからは霊電になりますので、到着までしばらくお待ちください」
(やはり俺は亡くなっていたようだ)
「ところで、霊電とはなんですか」
「あの世で霊魂が乗る列車です。この世にも電車があったでしょ。あれと同じですよ」
「そうなんですね。私は、どの駅まで乗ればいいのでしょう」
「車内に設置されている妖鈴が降車駅を知らせてくれます。この世みたいに切符も買わなくて大丈夫です」
すると、駅員が急に顔を曇らせた。
「列車がなかなか来ないと思ったら、地獄前駅でまた人身事故のようです。地獄での苦痛に耐えられなくなってホームから飛び込んだのでしょう。あの世だからすぐ生き返るのに困ったものです」
この世とあまり変わらないんだなあと安堵した半面、これから自分がどの駅で降ろされるのか一抹の不安を覚えた。
ホラー
公開:21/08/09 07:05
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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