用務員のおじさん

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娘の卒業アルバムを開いていたら、娘が背中から抱きついてきた。娘と私は同じ小学校なので、話が弾む。
「校長先生が言っていたけど、創立百年を超えるんだってね」
私のほほが緩む。私が在学中のときから、同じことを言われていた。百年を超えると、数十年は誤差の範囲らしい。
娘は自分が映っている写真や、仲の良い友達の写真をいろいろと示してくる。私の視線は懐かしい校舎に向かっていた。当時とほとんど変わらない。
ふっと、私は初老の男性に目が留まった。
「あ、これねえ、うちの小学校の用務員さん。一番長いらしいよ」
私が在学中にいた用務員さんと同じ顔をしている。だが、卒業してから四十年近く経っている。年を取らないなんて、ありえない。
ふっと私は思った。もしかしたら、時が動いているのは自分だけではないのか。世界は止まっているのではないのか。
よく見ると、娘と私は瓜二つだ。まるで、私の小学生時代のようで。
SF
公開:21/08/07 11:28

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