坂を上る
18
11
繁った森から蝉の鳴く声が聞こえた。
長い坂を上った先に友人夫婦の新居がある。
「タカシ君よね。藤原さんちの」
年老いた女性が息を弾ませて近づいてくる。
「ーーどなたかとお間違えでは」
「その口元に並んだ三つのほくろ、間違えませんよ」
どう答えていいか迷っている内に、少女が走り寄って来た。
「あら、もう? 今度、遊びにいらっしゃいね」
孫らしい少女が女性の腕を掴んで坂を降りていった。
友人宅に着くと挨拶もそこそこに話を切り出す。
「来る時に会ったおばあさんに、藤原って人と間違われたんだけど」
「そのほくろのせいね。藤原商店の息子さんなんだけど、行方不明なのよ。隣に住んでた清水さん、我が子のように可愛がっててねえ」
「きっと、その人だよ」
「人違いだよ。もう亡くなってるんだから」
帰り道、森の向こうに墓地が見えた。
ぽとりと落ちる蝉に思わず手を合わせた。
長い坂を上った先に友人夫婦の新居がある。
「タカシ君よね。藤原さんちの」
年老いた女性が息を弾ませて近づいてくる。
「ーーどなたかとお間違えでは」
「その口元に並んだ三つのほくろ、間違えませんよ」
どう答えていいか迷っている内に、少女が走り寄って来た。
「あら、もう? 今度、遊びにいらっしゃいね」
孫らしい少女が女性の腕を掴んで坂を降りていった。
友人宅に着くと挨拶もそこそこに話を切り出す。
「来る時に会ったおばあさんに、藤原って人と間違われたんだけど」
「そのほくろのせいね。藤原商店の息子さんなんだけど、行方不明なのよ。隣に住んでた清水さん、我が子のように可愛がっててねえ」
「きっと、その人だよ」
「人違いだよ。もう亡くなってるんだから」
帰り道、森の向こうに墓地が見えた。
ぽとりと落ちる蝉に思わず手を合わせた。
その他
公開:21/08/06 21:25
お盆なので
怪談
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
ログインするとコメントを投稿できます