金属バットが響く夜

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深夜のバッティングセンターほかに客はいない。
黙る俺に電話越しの女記者は突きつけるような声で続ける。

「衆議院の坂田氏は元は監督さんだそうで…」
もう全て話すしかないのかも知れない…。



「お前は三振でいい」
高校最後の夏、決勝9回の表、4番の俺に監督は言った。

「いや、打ちますよ俺」
そう笑ったが監督は反応しない。

一球目内角、見逃すもストライク。
二球目はいい当たりだがファール。
監督からサインはない。

疑念が頭を掠めると手元で曲がるカーブがバットをすり抜けた。

ーーストライィクッ!バッターアウツゥ!

その日初の三振、だが点差はあるし勝ちは揺るがない。

はずだった。

「よくやった」

監督の言葉が今も頭から離れない。



「話がある。今から言う場所に来てくれるか?」

女記者と通話を終え、振り返る。

野球帽の男の金属バットが俺の頭に振り下ろされた。
ミステリー・推理
公開:21/08/06 19:17
更新:21/08/06 19:26
あの夏の記憶⑥

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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https://twitter.com/Karatsu_a

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