故郷に錦

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私はインドの綿花畑で生まれ、仲間と一緒に日本へやって来た。直ちに工場で綺麗な綿布に加工され、その後は素敵なシャツに仕立て上げられた。
製品としてダンボールに詰められ、出荷される時、急な雨に箱が破れ私だけがトラックの荷台からぬかるみ道に落ちてしまった。
それを烏が見付け、山の巣に持ち帰ろうと咥えて大空に舞い上がった。
道がどんどん遠去かって小さく見えたが、水分を含んでいるせいか重さに耐えかね落としてしまった。

泥だらけの私を見付けて拾った人が、洗濯をし綺麗にしてくれた。丁度中古の衣類をボランタリーで寄付をしようとしていた時だったので、他の衣類と一緒にダンボールに詰め提出した。
受け取った輸出業者は、他の貨物と一緒に大きな船に積み込んだが、船員達の話声が聞こえてきた。
「さあーこれからインドのカルカッタへ出港だ」と。
これを聞いた私は驚いた、我が故郷に錦を飾る事が出来るのだと。
ファンタジー
公開:21/08/08 11:02

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