林檎飴

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病弱で何年も入院している私は、病室から見える打ち上げ花火を寂しく見ていた。

「夏だね」

同じ病室に入院している二歳年上の男の子が話しかけてきた。

「うん。夏だね」
「ねぇ。今からこっそり病室抜け出さない?お祭り行こうよ」
「えっ。だめだよ。先生に怒られちゃう」
「だって毎年見てるだけじゃつまらないだろ?」
「それは…そうだけど…」
「屋台で食べ物買ってさ、近くで花火見ようよ。近くで見たら絶対綺麗だよ」

彼に誘われ、私達は病室をこっそり抜け出した。

「凄い人の数だ。離れちゃだめだよ。手繋ごうよ。うーん、何買おうか?」
「まだあるかな?林檎飴」
「今日の事は、二人だけの秘密だよ」

ちょっとだけ悪い事をしているドキドキする気持ちと、男の子と手を繋いでいるドキドキ感。
これはどっちのドキドキかな?
林檎飴をかじりながら、病室で見るよりも近くて大きな花火を二人で手を繋いで見ていた。
公開:21/08/05 21:14

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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ブラウン・シュガー
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