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誰のせいでもない。大人は口を揃えてそう言った。

「よく頑張った。十分じゃないか。」と

怪物投手のせいでも、ショートのエラーもサードの暴投も、キャッチャーの配球ミスも関係ない。得点も6点もとれた。誰にも責任を押し付けるべきじゃない。

だから、あの夏、我が野球部が優勝を逃したのが自分のせいであるはずがない。絶対に。

そもそもあの一年生、怪物にレギュラーを奪われた俺はベンチで声を出していただけだ。

人生だって悪くない。坊主だった頭を金色にしたって誰にも咎められないし、タバコも吸える。暴力を振るっても仕事だから問題ない。取立てさえうまくいけばいいのだから。

「なんだお前の同級生じゃないか。ほら、一塁手の」
アニキの言葉で気づく。散らかった六畳間に蹲る真面目だったチームメイトは見る影もない債務者になっていた。

「こいつもかわいそうに、お前がサインを組に売らなきゃ人生違ってたかもな。」
ミステリー・推理
公開:21/08/05 19:37
更新:21/08/05 19:40
あの夏の記憶⑤ 夏風邪でダウンしてました コロナではなくて安心

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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