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このところパッとしない日々が続いたので、気分転換を兼ねて近所の由緒ある寺にお参りに出かけた。鬱蒼たる森に囲まれた境内は思いのほか広く、人影もまばら。そのまま参拝手順を記した立て札に則って手を清め、本殿の賽銭箱の前で目を閉じた。
「どうも近頃は運にも人にも見放されたようです。給料も頼れる友達も減っていくばかりで毎日が退屈で仕方ありません。こんな私でもどうか幸せになれますように」
小声でブツブツと願いを唱えて目を開くと、隣に杖をついた老人が立っていた。老人は皺だらけの顔でこちらを睨みながら「なっておらん」と言った。
「願いはな、過去形で言い切ることが肝要じゃ。神様仏様の前では信じ切ること、それが全てじゃな。ほら、もう一度目を瞑って試してみい」
突然ダメ出しされて戸惑ったが、「……おかげさまで幸せになれました」と言い直す。少しだけ自信が湧いてきたような気がした。目を開くと老人の姿は消えていた。
「どうも近頃は運にも人にも見放されたようです。給料も頼れる友達も減っていくばかりで毎日が退屈で仕方ありません。こんな私でもどうか幸せになれますように」
小声でブツブツと願いを唱えて目を開くと、隣に杖をついた老人が立っていた。老人は皺だらけの顔でこちらを睨みながら「なっておらん」と言った。
「願いはな、過去形で言い切ることが肝要じゃ。神様仏様の前では信じ切ること、それが全てじゃな。ほら、もう一度目を瞑って試してみい」
突然ダメ出しされて戸惑ったが、「……おかげさまで幸せになれました」と言い直す。少しだけ自信が湧いてきたような気がした。目を開くと老人の姿は消えていた。
ファンタジー
公開:21/08/06 16:45
更新:21/08/06 16:52
更新:21/08/06 16:52
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2022年から米国在住。
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