晴れ舞台

ステージに上がる。
いよいよだ。こんな大舞台でライブができる日が来るとは思ってもいなかった。
ギター兼作曲のシュウの目には、早くも涙が見える。…シュウには苦労をかけた。名曲「袋のネズミ」を作る時は、あわや解散というほどの大喧嘩をした。ドラムのコウタが必死に仲裁してくれて、みんなで話し合って。本当にいい曲になった。
コウタはいつもベースのミクと連んでいた。リズム隊はコミニュケーションが大事なんだって、馴染めないでいたミクを引き込んでくれたな。
ギターボーカルのマイケルが、ありがとうと囁く。ハーフのマイケルは、昔は仲間もおらず、いつも一人で寂しそうだった。今では、人懐っこい笑顔がバンドの顔だ。
…いい仲間を持った。つくづく思う。そんなみんなに可愛がられて、俺は本当に幸せ者だ。

「一曲目、またたびトリップ」
ネコの俺はパタパタと長い尻尾でリズムを取ると、ゴロゴロ喉を鳴らし始めた。