論より証拠、百聞は一見に如かず

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その一畳ほどの空間に華美な装飾はない。
むき出しの電球一つと、小さなサッシの窓があるだけだ。
そこには陶製の椅子が一つ、口を開けている。
所謂、トイレである。

「僕ト、入レ替ロウヨ」
朝のタイム時に、不意に後ろから声がした。
「誰?」
「僕ダヨ、一日ダケ、ネ?」
振り向くとそこには小窓があった。
小窓と…入れ替わる?
意味が分からないが、面白そうだ。
僕は承諾し、一日だけトイレの小窓になることにした。

だと思い込んでいた。

気がつくと、僕は大きな口を開け、陶製の便器になっていた。
それからは大変だった。
朝のタイムに次々とやってくる家族のモノをキャッチし続けたのだ。
「うわぁーーっ」

大声を上げ、僕は目を覚ました。
扇風機はタイマーが切れ、止まっていた。
汗で濡れた服が、べっとりと肌に貼りつく。

暑さのせいだったのだろうか。
しかし、あの日以来、僕は便器への敬意を忘れない。
その他
公開:21/08/06 06:52
暑さにやられています

おおつき太郎

面白い文章が書けるように練習しています。
日々の生活の中で考えたこと、思いついたことを題材にしてあれこれ書いています。


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