少年ジャンプ

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漫画みたいにはいかないさ。

怪物といえど一年生。ミスは誰にでもある。挽回だ。チームで守れば勝利は目前。

「サード!」

強い打球、視認より先にミットが捉えた。一塁手目がけ腕を振り抜く。何万回も繰り返した、練習通りだ。俺たちの勝ち。

そのはずだった。

球は一塁手を逸れ、ランナーが土を蹴る。

大事な局面で俺の球は逸れる。いつもそうだ。

仕事も、家庭も、取り返そうともがく度、注がれるあの目。

憐れむ失望の目。


「パパ、ボール」
河川敷、息子の声で足元のボールに目を落とす。向こうで野球少年がグローブを構えている。

このボールが届いたら、愛子に、元嫁にやり直そうと伝えよう。

淡い期待を挫くように白球はみるみる軌道を逸らす。

また半年も息子に会えないのか。諦めたその時。

ジャンプした野球少年がグラブを鳴らす。

帽子を取って会釈する少年の姿は、夕焼けに滲んでよく見えなかった。
青春
公開:21/08/03 12:12
あの夏の記憶④

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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