夜のコインランドリー

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僕はコインランドリーで洗濯機の中を見つめていた。
中では僕の心が洗われている。
「ね、意外と汚れているでしょ?」
彼女が得意げに言った。
「全然自覚がなかったよ」と僕は言う。本当に自覚がなかった。
「生きているとね、イライラすることや嫌なこと、悲しいこと、色々起こるでしょ?それは自分が思っているより心を汚すの。汚染された心はやがて……」
そこでピーピーという音とともに洗濯機が止まった。
彼女は蓋を開け、僕の心を取り出した。
「ほらね、綺麗になった」と彼女は言うと、僕の左胸に手を押し当て、心を戻してくれた。
「それじゃあ帰ろうか」
僕たちは濁った夜空の下、家までの道を歩いた。
夜風が吹くと洗剤の香りが鼻をくすぐる。
それは僕の心の中から香ってくるものだった。
「ねえ、不思議と体が軽いよ」
僕は自分でも驚くほど明るい声で言った。
しかし、隣を歩いていた彼女はもういなくなっていた。
公開:21/08/02 22:58

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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