16
3

 俺は子どもの頃、学校の裏山の祠にいたずらをした。ふるいお稲荷様だ。いたずらと言ってもケータイで一緒に自撮りしたり、持っていたファンタを「おそなえ」したり。その晩、白い狐が夢に出てきた。


「よくもわらわを軽んじたな。そなたには生涯落ち続ける呪いをかけてやろう」


 うーん、ファンタを開けるときペットボトルから炭酸が噴射して祠がファンタまみれになったのがまずかったかな。でも受験も会社面接も落ちることもなく穏便に暮らしている。階段からも落ちないし、乗った飛行機も落ちない。結婚もした。妻は色白で細身の、クールビューティー。俺の一目惚れだった。妻は手料理がうまい。ほっぺが落ちそうだ。あれ、妻があのときの狐か? 晩酌のとき、向かいあわせに座っている妻の顔をまじまじと見た。妻は油揚げと水菜のサラダをつまみながらにこっ、と微笑んだ。
ファンタジー
公開:21/08/04 09:43
更新:23/02/24 20:41

千億アルマ( Tokyo, Japan )

Senoku ALMA
https://note.com/shiro_mid

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容