新石器時代

その日、全人類の石器時代生活が決議された。電気、ガス、水道はない。道具は石斧だけ。武器は石棒だけ。車も電車も飛行機もない。
政治家も経営者もサラリーマンもみんな家に帰って上着を脱ぎ捨て楽な格好、半裸になった。石の山のマンションから住人はぞろぞろ降りてきた。川のそばが人気がある。地下鉄の跡は暖かいが暗さに慣れる必要がある。
石の棒を手に人々は街のレストランやコンビニにどかどかと食料を獲っていったので街から食料はあっという間に空っぽになり、次に向かったのは農村や漁村。食料のある村々には人々が溢れて喧嘩は絶えず怪我をするものも多いが不思議と死人はほとんど出ない。人間が倫理的なのか、動物本能が優れているのか。
夜になると寝るしかない。朝には自然に目が覚める。医者はいないが病気になるものもめっきり減った。
・・２５世紀のことである。爛熟した文明に人類は退屈し、選択した新しい石器時代の始まりであった。