ジャンキー社員食堂

入社初日の昼休み、食堂の扉を開くと脂と砂糖の匂いが脳みそを激しく掻き回した。
　
パティと分厚い肉が何層にも重なるハンバーガー、麺にコテコテのスープが絡みつく豚骨ラーメン、チョコレートと生クリームが山のようにかかったパンケーキ…

新入社員達が唖然としているのに全く気付かないまま、背中を丸めた社員達が目を血走らせながら貪り食っている。

見覚えのある顔がある、と思ったら就活でお世話になった人事だった。口の周りをソースでくちゃくちゃにしながらハンバーガーを頬張っている。

「もちろん、私も食には気を使っていますよ。ウチは健康が売りの食品会社ですからね。」

会社説明会でそう言って笑った人事の白い歯を思い出す。


しばらくして、食堂に入ってきた先輩社員が耳元で呟いた。
「綺麗事だけじゃさ、やっていけないんだよ。社会人っていうのは。」


その日食べたラーメンは、あまり味がしなかった。