図書館の妖精

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図書館で本を探していて、ようやく目当ての本を見つけたと思って手を伸ばしたら、横から違う手が伸びてきた。触れ合う手と触れ合う視線。あ、高橋くん…。

話しかけたいと思っていても、どうせ私なんて相手にされるはずないしと思って声をかけることすらできなかった。こんなドラマみたいな展開があるんだと思いながら、その本をどうしたらいいかわからない。やっと見つけた本だから手に取りたいけれど、ここは譲るべきなのかしら。

「君もこの本を探してたの?僕もレポート書くのに必要なんだけど、どうしようか?」

どうしよう、話しかけられちゃった。もう、なんて答えればいいのよ、心の準備ができてない!

それを陰で見ていた妖精は、「せっかくいい機会を作ったんだから、ちゃんと話しなよ〜」と歯がゆい思いで聡子を見ていた。図書館の妖精は、本が好きな人に幸せになってほしいと思っているから、時々こんな悪戯をする。
ファンタジー
公開:21/11/07 23:09

花奈

本を読むことが大好き。本屋を開きたい。

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