雨の中のわらべうた

雨の中で「花いちもんめ」の歌が聞こえる。

傘を持って散歩に出たが、やはり降られてしまった。
神社の軒下で佇んでいると、境内の向うから童歌（わらべうた）が聞こえた。目を凝らしたが、誰もいない。

私は昔から「雨男」だ。と同時に、雨が降るとなぜか、妙な風景や音が感じられる。

よく、雨が降ると昔を思い出す、という人がいる。
または、雨が降る前には雨の匂いがする、という人もいる。
私の場合はそれが一層、激しいのかもしれない。

雨で漂う細かい空気の中の粒。微かな雨の音。そんな物が、私の頭の中で、きっと何かの感覚を呼び醒ますのだ。

神社の境内で、童歌は続く。
これは一体、どこの世界の子供だろうか。昔、この場所にいた子たちか。それとも異界か。
もしくは、隣にある、別の世界？

雨の日にはそんなものを、私は感じる。
雨は止まず、歌はまだ続く。

♪勝って嬉しい花いちもんめ、負けて悔しい花いちもんめ