名医でも分からない細菌

「先生、娘は助かるのでしょうか」
「すまない、私には無理だ」
「そ、そんな。先生、お金ならいくらでも出します。どうか娘を助けて下さい」
「いくらお金を積まれても無理です。医学にも限界があるんです」
「それでは娘は死んでしまうのですか」
「いえ、希望はまだあります。あの人ならもしかしたら」
「それは誰ですか。現代のブラックジャックですか」
「いいえ、考古学者のジョーンズ氏です」
「その人は医学にも精通しているのですか？」
「いいえ、彼はただの考古学者です」
「それではなぜ？」
「原因の細菌に刻まれた文様がどうやら古代に失われたアシュダット文明の文字に似ているのです。もし、これが解読できれば、命を救うヒントになるかもしれません」
「それでは早く連絡を取って下さい。その先生は今どこにいるのですか？」
「わかりません。彼は携帯を持っていないのです。今、どこにいるのやら居場所が分かりません」