バレンタイン

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 僕の彼女は守銭奴で、デート代は必ず僕が持つことになっている。

 教室に入る。バレンタインだからか、甘い香りがしている。自分の席につくと、前の席に座る彼女が振り返る。
「はい」と、僕の机にチョコの入った箱を置いた。
「お返しは三倍返しってこと?」
 彼女は目を丸くしたから、バツが悪くて僕は慌てて補足する。
「だってほら、安く買って高く売るって言ってたじゃないか。この前さ」
「ああ。うん。でもこれは普通にあげる。お返しはまあー好きにしていいよ。なくても全然」
 今度は僕が目を丸くする番だった。彼女はその様にため息をついた。
「そんな驚く? 信用ないなぁ。ほら、タダより高いものはないって言うでしょ?」
「じゃあこれは、無償の愛ってわけか」
 そう言うと、彼女は顔を真っ赤にした。
 冗談を言ったつもりだったけれど、つまるところそういうことだったらしい。
 今度は僕が顔を赤くする番だった。
 
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公開:21/11/04 04:15

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