タペストリ

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朝焼けや夕焼けが、真っ赤に染まっていることがあるだろ。あれはタペストリの群れのせいさ。
大きな翼を広げて舞うタペストリの形が、壁掛けの織物であるタペストリーのように見えるからそう名付けられた。「フェニックス」「不死鳥」と呼ばれる火の鳥がその正体さ。
タペストリは、普段は無色透明で見えないけれど、朝陽や夕陽に向かって飛んでいるときは焔(火炎)のように燃える赤色になる。
また、途中でタペストリが富士山の近くを通りかかると、美しい赤富士になる。
どうもタペストリの帰巣本能が赤くさせるらしい。
そして、タペストリは地平線へと姿を消し、ねぐらのある赤道に戻っていくんだ。
そう、赤色のタペストリが渡り鳥のように海を越え、地球をぐるりと一周、一直線に列をなして休息しているから「赤道」というんだよ。
その後、タペストリは、地球内部のマントルへと突き進み、エネルギーを補充すると、次の旅支度を始めるのさ。
ファンタジー
公開:21/11/07 07:19
朝焼け 夕焼け タペストリー フェニックス 不死鳥 火の鳥 朝陽 夕陽

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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