素晴らしき10月

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江戸の町で働く私。仕事を終え、家路につこうとしたところ先輩に呼び止められた。
「今夜一杯どうだい?」
この先輩、良からぬ噂がある故出来れば関わりたくない。
「家で妻が待っておりますので…御免」
立ち去ろうとする私に先輩は驚きの言葉を投げかける。
「その愛妻も呼んでいるんだとしたら…」
何だと?それは聞き捨てならぬ。いざとなれば、この男を切り捨てる覚悟を決めた。

先輩と訪れた場所は遊郭だった。さて、こ奴をいつ切ってやろう?
妻と合流し、3人で店に入る。通された部屋には3人分の食事。それと御簾の奥に人影…誰だ?
「それでは始めてくれ」
先輩の声に人影が頭を垂れ、ゆっくりと口を開く。これは…江戸で今流行りの小説だ…
「君らが読みたかった話だろう?」
私に耳打ちする先輩。
「素晴らしき10月。秋の夜長の朗読。女遊ばかりが遊郭じゃない」
先輩の真意に頭が下がる。
「ちなみに簾の奥の女は俺の妻だ」
公開:21/11/02 20:31

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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