多様性相談室

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待合室に入るとちょうど面談を終えた先客と鉢合わせた。
先客は「私は無理かな。ぐうの音も出ないですよ」
と私の問診票を覗き
「へぇ。貴方漢字だとそう書くのですか」と驚いた。
「そうなんです。生意気そうでしょ」と私は自嘲する。
「でも確かにそうですね」先客の目線に促される様に窓に目を移す。
外は雨が降っている。

「私達にも多様性を認めてもらいたい!」
「貴方には多様性は認めらないんです」
受付が騒がしい。
「あの人達は枕詞なんで無理ですね。「たらちね」と「ちはやふる」だ」
ああと私は彼らの運命に同情した。
私の名前が呼ばれる。
ではと先客の『ぐう』さんとは別れた。

「いやー今日はあいにくの雨ですねぇ」
相談官は笑顔で言った。
私は苦笑いし問診票を手渡した。
「あ…」相談官はしまったと眉を寄せた。
「『生憎』さんでしたか」

「はい、天気関連の言葉以外との接続の多様性を模索しているのですが」
SF
公開:21/11/02 10:08
更新:21/11/02 15:43

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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