購入したのは、表紙が気に入った本。

0
1

 「パパ、これ買って」
 4、5歳になるであろう男の子が組立式の玩具を指さして言う。
 父親が承諾し、男の子が歓喜しようとした瞬間だった。
 「ただしちゃんと片付けるんだぞ!」
 男の子に圧力をかけるように、重みがかった声で父親が言葉を発した。
 子供は、嬉しさを爆発出来ず、顔が強張る表情を見せながら頷く。
 「ほんとだろうなー、ちゃんと片付けろよ!」
 
 その時、私の目の前を1組のカップルが横切る。
 「そういえば、あの本見た?」
 「うん見たよ、面白かった!」
 「あの2人が出会うシーンのさ、ーーーーーったーー」
 2人ともなんの本にも目を向けず、ビデオコーナーの方へと向かって歩いて行った。
 
 そして私は、後ろに手を組みながら一通り本を眺めた。
 芥川賞受賞作品をどこか気にしながら、多々の本を見ている。おそらく私は、受賞した本を買うのだろうと思った。
 


 

 
 
その他
公開:21/11/03 02:48

熊白ヨイ

よろしくお願いします。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容