黒い鎖の赤い糸

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子供の頃よく遊んだ河原に腰を下ろした。
小さな村で人目を気にせず会えるのはここくらいだ。
「つまり家同士で仲違いしてたって事?」
舞の説明に仁は戸惑った。
「私の杉田家が一方的に拒絶してるみたい。日常的な付合いは別として婚姻となると仁君の日吉家だけはご法度みたいなの」
先週交際の挨拶に行ったら頭ごなしに断られた意味は理解できた。
「で、真相は私達先祖の婚約破棄だったそうよ」
舞の曾祖母、初と仁の曽祖父、肇が恋に落ち婚約までいったが肇が一方的に破棄したと。
初の父が激昂し日吉家を末裔までの拒絶する旨の遺書まで残したそうだ。
「もし…二人が成就してたら今僕達は存在していないね。複雑な気分だ」
そうねと舞は川面に石を投げた。
「実は…爺ちゃん酔うと必ず『俺は親父が望まぬ結婚をして産まれた子だ』って言ってたんだ」
「嘘。それって…」

「最悪、駆け落ちだな」
差し出した仁の手を舞は笑顔で握った。
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公開:21/10/31 13:53

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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