掃除木

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干上がった土地や禿山に、遠隔操作のロボットによって膨大な数の「胞(ほう)木」が植えられた。
胞木は、日光や水、肥料などの栄養がなくても生長し、天高く伸びて巨木となった。
「掃除木」と名を変えた巨木は、スティック型のサイクロン式掃除機にそっくりで、あっという間に木から林、森へと変貌していった。
掃除木の森は、世界の経済発展に伴って排出された大気汚染物質、その後の核戦争によって生じた高濃度の放射性物質を、大量に吸収した。
もともと木には、気候変動(地球温暖化)の原因となっていた温室効果ガスの二酸化炭素を吸収する機能があったから、それをバイオテクノロジーによって応用したのが掃除木だ。
掃除木が吸収し終えると、大きな実がなった。実の殻は椰子のように非常に硬く、この中に掃除木が吸収したものが閉じ込められている。
地球の大気は浄化され、人類の生き残りは地上へと戻る。そこには緑豊かな楽園が広がっていた。
SF
公開:21/10/30 07:08
土地 禿山 日光 肥料 栄養 掃除

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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