スピーカーゴーストライター

スピーカーから流れる音楽は、全て偽物だ。
テレビで紹介されているものも、ラジオで聴くものも、全部ゴーストが作ったと誰も知らない。
所詮、音楽でそこまで気を遣って耳を傾けている人間はいないのだ。疑うことなんて日常からしないから、この嘘を見抜けない。

また流れてきた。
これも私が作ったものだ。作詞も作曲も、私めがお金を積まれて創作したもの。
どこへ行っても、自分の曲を耳にするのは嬉しいことではある。まるで自分が売れているかのように錯覚する。
でも、これを自分で歌って出していればどれだけ日の目を浴びることができていただろうか。

私には自信がない。
顔を曝け出して、自分の声で歌うことに対して。そんなことができていれば、とっくにしている。
でも、まるでできない。
だから私は姿を隠してまで、それでも音楽活動をしている。
ワガママに、姿を隠して自分を売り込むゴーストなのだ。