笑顔を振りまいて

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青い空。白い雲。真昼の陽炎が立ち込める夏の時。彼女はそこに立っている。僕が追い付くと彼女は、走って少しだけ先に進む。後からゆっくり歩いていく僕に笑顔を振りまいて手を振っている。歌声が聞こえる。彼女は歌を歌い始めた。透き通るような綺麗な声だ。夏の容赦ない暑さにも負けず、彼女は元気だ。ビュッと風が吹き、彼女が被る鍔の広い帽子が飛んでいった。

「あっ……」

僕は声を出した。帽子は空高く舞い上がり、風に乗って紙飛行機のようにフワフワと飛んでいく。彼女は帽子を追いかけていく。それを見て僕も彼女の後を追いかけて走り出した。ようやく帽子を捕まえた彼女は、帽子を拾い上げて被る。そしてくるりと僕の方を向く。

「ねぇ。約束覚えてる?」
「もちろん」
「三年間ずっと待ってたんだよ。長かったなぁ」
「悪かったよ。待たせちゃって」

彼女が走ってきて、僕の胸に飛び込んできた。

「おかえり」
「ただいま」
公開:21/10/27 10:21

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

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ブラウン・シュガー
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