絶対恩感

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「そしたらこの音は何だい?」
グラスをフォークで叩くと店内に甲高い音が響き渡った。
店内が一瞬沈黙し好奇の視線を周辺視野で感じた。
自信過剰な男。自分以外はモブキャラとでも言わんばかりの態度。
今日も『忙しいがお前と飯を食べてやっている』スタンスなのだろう。
「その絶対音感じゃ無いんです」
嘲笑ぎみにまあいいと前置きし
「君の事は買っているんだ。困ったことがあれば何でも言いなさい」
瞬間その言葉に生臭い嫌悪感を感じた。笑顔から厭らしさが滲み出る。

帰り道、駅前で声を掛けられた。
「週末に一人で帰宅ってフラれたのか」
「なんでアンタがこの時間にシラフなのよ」
「休日出勤だよ。シラフは今から捨てに行くよ」
幼馴染は笑った。私の全身を眺めて。
「生き難い格好してるな。よし、話だけはタダで聞いてやる。一杯付き合え」
瞬間その言葉に不器用な優しさを感じた。しかめっ面から照れが溢れ出している。
その他
公開:21/10/23 11:36

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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