フラレタリウム

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失恋したひとばかりが集うプラネタリウムがあるというので行ってみた。
実は、そういう私も先日、憧れの先輩に告白してふられたばかりだ。
会場は何の変哲もないプラネタリウムのようだが、場内では『フラレタリウムにお越しいただき誠にありがとうございます』と何度もアナウンスしている。
早めに到着したせいか会場はまばらだったが、定刻になると満員になった。男女比率半々でバランス良く来場しているようだ。
いざ始まると、肝心の夜空の映像には星が見えず、漆黒の闇に包まれていた。ただ、静かなクラシックなど心の傷を癒す音楽が流れ続けている。
すると突然、夜空の映像が満天の星空に変わり、無数の流れ星が見えた。
『皆さん、願い事を一つ、三回唱えましょう! 必ず叶います』
場内アナウンスが流れた。
フラレタリウム終了後、来場者はいつの間にか全員カップルとなり、新たな恋の予感に胸をときめかせ、うれしそうに会場をあとにした。
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公開:21/10/23 07:00
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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