ワザコト

ある日、太助さんは村の外れで、子供達にいじめられていた小鬼を助けた。

小鬼は喜び、「助けてくれてありがとう。お礼に、私たちアマノジャクに伝わる呪文を教えましょう。ワザコトと言って、ことわざを逆に唱えなさい。その通りになりますよ」
そう言って消えてしまった。

この“ワザコト”の威力は凄かった。
怪力の追いはぎに出会った時、「力持ちは縁の下」と唱えると、相手はコソコソと、近くのお寺の縁の下に逃げてしまった。
日照りが続き、畑が水不足になった時「地固まって雨降る」と唱え、地面を踏み固めると、空から雨が降ってきた。

こんな調子で、事あるごとに難を切り抜けてきた太助さん。

でも機転が利く太助さんが、最も上手にこのワザコトを使った時があった。
それは、村の娘の花ちゃんに、思いを打ち明けた時。
そっと「こう言えばああ言う」とつぶやいたのだ。

花ちゃんは思わず「はい」と返事をしてしまった、とさ。