走りがちなまち

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このまちにはぼんやりさんが多い。それは平和で楽しいことなんだけど時折なんだかなぁと首をかしげる日もある。たとえばそれは今日だ。僕はいつも飼い猫に連れられて散歩しているわけだけど、うちの猫は馬のように前足を高くあげて胸を張って歩くから、すれ違うひとによく「調教師さんですか」と声をかけられる。馬のように歩いているといっても茶トラの猫だし、僕はハクビシンふうの全身タイツを着ているわけだから馬でも調教師でもないのは明らかなのに、このまちのひとたちは一度すれ違って僕が否定したことでもすぐに忘れてしまって、午後にはまた「いよいよ菊花賞ですね」とか「気合いがのってきましたね」とかうちの猫をG1馬扱いする。確かにこのまちは阪神競馬場の中にあるし、散歩するのはもっぱら本馬場だからみんなその気になるのはわかるけどなんだかなぁと思う。確かにファンファーレが鳴ると気持ちはのるし、結局今年も僕らは走るのだけど。
公開:21/10/24 17:41

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