純喫茶パブ

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犬のイラストが描かれた看板が目印の「純喫茶パブ」の前を通ると、いつもいい匂いがして唾が出る。甘いホットケーキと香ばしいコーヒーが混ざりあった匂いだ。
休日、おやつタイムの午後三時ごろ、甘党の私は、とうとう我慢できなくなって「純喫茶パブ」に入った。
店の扉を開けた途端、いつも店の外に漂っているいい匂いが充満していて、止め止めなく唾が出てきた。
昭和っぽい雰囲気のある、小ぢんまりした店内を見渡すと、客のほとんどがホットケーキとコーヒーを飲食していた。私も同じくホットケーキとコーヒーを注文する。
「いつも店の前を通るといい匂いがして。純喫茶なのに『パブ』という店名がユニークですね」
マスターに声をかけた。
「お客さん、いい匂いがして唾が出ませんでしたか。そういう生理現象を『条件反射』というでしょ。それを発見した実験が『パブロフの犬』、略して店名を『パブ』、犬を看板のトレードマークにしたんですよ」
その他
公開:21/10/24 07:00
純喫茶 パブ ホットケーキ コーヒー おやつ 午後三時 甘党 条件反射 パブロフの犬

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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