俗世へGO

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大人しいねと言われた。私は君たちに近づきたい。ここは楽園だ。でも安住の地ではなかった。私は未だに童貞だ。楽園ではそれが当たり前だった。もっと貪欲になってみるか。でもそれはなかなか難しい。そんなとき彼女と劇的に出会った。名前は李娜という。テニス選手のような名前だ。彼女は運動音痴だった。でも優しかった。彼女といるときだけ癒された。楽園とそっち側の世界との壁が取り払われたような感じだ。そっち側の世界をなんと表現しようか。そうだ、俗世だ。それが一番しっくりくる。
 私は俗世へと向かい始めた。でも彼女といなければそれはままならない。そんなある日彼女が姿を消した。私は途方に暮れた。また世の中は楽園になった。楽園は楽なところではない。味方は誰一人としていない。みんな私を影から覗くスパイのように思えた。だんだん彼女の記憶が私の頭のなかから薄れていく。ただ李娜という名前だけが私の頭の中を浮遊するのだった。
その他
公開:21/10/20 16:57

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