たなかの名札

4
1

左の胸ポケットに付いた名札には、”たなか”とひらがなで書かれていた。たなかは、スーツ姿だった。正午の時間帯、うどん屋のカウンター席で隣に座ったその男は、きつねうどんを食べていた。そんな”たなか”は、私の方に向いた。

「ねぇ。お姉さん」
「はい?」
「僕の名前、何だか分かります?」
「たなか?」
「えっ!凄い!どうして分かるんですか?」
「だって名札が付いてるから」
「あっ、いけない!!名札付けっぱなしだった」

”たなか”は、そう言って、グーで自分の頭をポンッと叩いた。まるでぶりっ子の女子のようだ。

「というのは、嘘。名札を付けてるの忘れてたわけじゃないですよ」

嘘かよ!!何なの!!

「で?」
「実は、たなかって偽名なんですよ。お姉さん。僕の本当の名前分かります?」
「知らないわよ」
「僕の本当の名前、それは……中田です。田中の逆でした」

誰かこのうざい客を店から追い出してくれ。
公開:21/10/22 11:56

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

〇サウンドノベルゲーム版作品(無料プレイ可)

ブラウン・シュガー
https://novelchan.novelsphere.jp/38739/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容