アサギマダラと私

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職場の窓際に飾っている植木に一匹の蝶が止まっている。
「珍しいな、こんなオフィス街に」
薄い水色の羽に黒の翅脈がステンドグラスの様に配置された美しい蝶だ。
「へぇ。アサギマダラだ」部下の一人が呟いた。
「田中。虫詳しいの?」
「田舎の昆虫少年だった名残です」
「へぇ。アサギ…?」
「アサギマダラ。神秘の蝶の異名もあって2千km以上旅をする渡り蝶なんですよ」
「2千って…」
「北海道から九州まで行ける計算になります。海も越えるそうなんで場所によっちゃ中国まで行けそうですね」
「蝶の寿命てどのくらい?」
「確か4,5ヶ月ですかね」ほぉと普段叱ってばかりの部下に感心した。
「あ!すごい羽にマーキングしてある!」
羽に印が見て取れた。
「行動を研究するために追跡調査するんですよ。SNSにあげたら伝わるかな」興奮した部下は自席に戻った。

私は私で高鳴る動悸に耐え、袖を捲り蝶と同じ印を眺めた。
ホラー
公開:21/10/21 12:54
更新:21/10/22 11:59

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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