メンチカツ

まだ、結成して3か月。
駆け出しのお笑いコンビである僕らの仕事はほとんど地方営業であった。
「メンチカツ」はコンビ名である。
よく、どっちが「メンチ」で、どっちが「カツ」ですかと聞かれるが、まだ決めていない。
まあ、どっちでもいいけど。
今日は、前座で山の麓のまちの公民館にやって来た。
過疎化が進み、来てくれるのは30人ぐらいのおじいちゃん、おばあちゃんと聞いている。
ジェネレーション・ギャップもあり、ネタをおじいちゃん、おばあちゃんに合わせるのが大変である。
トリはここ地元出身の落語家の林家ヨン平師匠だった。
予想通りではあったが、ネタは全然受けず、「どうもありがとうございました。」と舞台の脇へ下がろうとした所、最前列に座っていたおじいちゃんが、ソースと小皿を持って立ち上がり、一言発した。
「メンチカツは、まだかのう？」
他のおじいちゃん、おばあちゃんも小皿を持って立ち上がった。