選路は続くよ、どこまでも

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俺の勤める鉄道会社には暗黙の不文律がある。曰く
「恋人に電車の話をするな」
どうやらデートで延々蘊蓄を垂れてフラれた奴が数多くいるらしい。佳奈と付き合い始めてからは、俺も心してその諫言を守っていた。

ある日、たまには遠出しようと二人でSLに乗った。まあ乗るぐらいならいいだろう。
だが佳奈は意外なぐらい楽しそうだった。SL型の切符に喜んだかと思うと、売店のSLチョロQにちらちらと目を走らせている。

やがてデキ(電気機関車)に牽引された機関車が入線してきた。C58型か、とカメラを向ける。
「あっ!シゴハチ!」
俺は驚いて佳奈を見た。だが彼女の目はSLに釘付けだ。

―今日、プロポーズしよう。

俺は即座に心を決めた。
大丈夫、きっと俺たちは上手くいく。ここから二人の旅を始めるんだ。

最高の一枚を撮ってやろうと息を詰めてシャッターを切ったその時、C58の勇壮な汽笛が轟々と駅舎に響き渡った。
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公開:21/10/14 18:02
更新:23/03/31 18:07
以前射谷さんとコラボした作品 ちょっと改定して旅コンへ 電車 蒸気機関車 鉄オタ プロポーズ プチコン 旧題:ハレの日は鉄道に乗って2

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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