ハレの日は鉄道に乗って

　子供の頃は電車が嫌いだった。キャラクターショーを見たかったのに、弟が騒ぐから行き先は鉄道公園や鉄道博物館ばかりだった。
　楽しくなかったわけではない。でもはしゃぐのも面白くなくて、不貞腐れ、両親を困らせていた。
「どう？　写真選べた？」
　母が懐かしそうにアルバムを覗き込む。
　今日は、実家に結婚式で流すスライドショー用の写真を選びに来ていた。
「笑ってないね、私」
　母が突然、吹き出した。
「何よ、笑ったりして」
「だって、これ笑いを堪えてる顔なのよ。本当は乗り物が大好きなくせに意地っ張りでねえ」
　写真の中に、嬉しそうにミニSLに乗り込む横顔があった。
「ーー通ったおかげで、SL絵画コンテストに入賞したもんね」
「まだどこかにあるわよ」
　探しに行こうとする母を慌てて止める。
「そんなの出したら、あれこれつっこまれるわよ」
　結婚相手が鉄道マンなんだから。