最高のおもてなし

長期入院している僕の唯一の楽しみは夢を見る事だ。やりたい事を考えるって意味じゃない。寝て夢を見るんだ。
夢の中なら僕は何だって出来る。外を元気に走り回れるし、お腹いっぱい好きなものを食べられる。そんな夢を叶えてくれるぼくがいる。
ああ…夢の中はなんて楽しいんだ。現実は辛いだけだ。もう戻りたくないよ…
『じゃあ、ぼくが戻ってあげるよ』夢を叶えてくれるぼくが僕の姿になった。
『ほら、これでぼくは僕になった。僕はここで最高のおもてなしを受け続けるといいよ』本当に？ありがとう！僕、ずっとここにいるよ！
…目覚めたぼくは医師に手術を受ける旨を告げた。
それと最近、怖い夢を見るから夢を見ないようにして欲しいと言ったら睡眠導入剤を手配してくれた。
何だ。現実も悪くないじゃないか。
僕はこれの何が不満だったんだろう？まあいいや。夢なんて忘れるものだ。
ぼくは僕を忘れ、夢の住人だった事も忘れ現実に生きよう。