心の間取り

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「この先に…1部屋ございますね」
案内人が示す先は暗闇だった。
「先…まだこの先が?」私は驚きの声をあげる。
「過ごし慣れた部屋が快適とは限りません。行かれますか?」
小さく私は頷いた。
案内人は暗闇をぐいぐい進んでゆく。
「付いて来てください」
立ち止まるとマッチに火を灯した。ぼんやりとドアが浮かび上がる。
「さあどうぞ」
6畳間ほどの部屋は壁一面に絵が飾られていた。
作業机には画材が並ぶ。メモ用紙には書きかけの詞がありスタンドにはギターが立て掛けてある。
「この部屋…初めてじゃない」
「もちろん。埃や劣化は見られません。忘れていたというより『大切に保管されていた』ようです」
案内人は微笑み、目の前で指を弾いた。

催眠が解けると案内人と同じ顔が目の前に居る。
『心の間取り案内します』の看板がここが何処かを思い出させた。
「新たな居場所、見つかりましたか」

はいと親指で涙道を拭った。
SF
公開:21/10/15 10:53

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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